マスターズ2011総括(1):「勝ち方知ってる」チャール・シュワーツェルがものにしたワンチャンス

昨年3月、WGC CA選手権でのこと。最終組で一緒に回ることとなったチャール・シュワーツェルについて聞かれると、アーニー・エルスはこう言っていた。


「ジュニア時代から彼は数多くの試合を勝ってきた。飛距離もある。才能に溢れている。チャンスさえ巡ってくれば、次の南アフリカ出身のスターが誕生することだろう。必ず中心選手の一人になる」


マスターズ最終日バックナイン。タイガー、R.マッキロイ、A.カブレラ、A.スコット、L.ドナルド、K.J.チョイ...層々たるメンバーがリーダーボード上位で目まぐるしく順位を争っていた。ただ、だれ一人として抜け出せなかった。


エルスが言う「チャンス」がやってきた。


16番パー3でアダム・スコットがバーディ、一歩抜け出したかと思った時、シュワーツェルのラストスパートが始まった。マスターズ75年の歴史の中で、史上初となる「上がり4ホール連続バーディ」の離れ業で初メジャー制覇をオーガスタという舞台で達成した。


1961年にゲーリー・プレーヤーがインターナショナルプレーヤーとして初めてグリーンジャケットを羽織ってから今年が記念すべき50周年。今年、ゴルフの神は松山英樹と日本に微笑んだ。勝利の女神は南アフリカを選んだ。

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photo: zimbio.com


シュワーツェルは今年8月で27歳。年齢だけを見れば若手、でも経験値ではベテランの域に入っている。2002年、当時の欧州ツアー史上3番目の若さでQスクールを突破し、プロの仲間入りを果たした。南アフリカのサンシャインツアーで史上2人目となる3 年連続賞金王にも輝いている。昨季は欧州ツアー開幕2連勝も飾った。


同世代にあたるダスティン・ジョンソン、ライアン・ムーア、ハンター・メイハン、アンソニー・キムらは、一目置かれているものの大舞台で一皮剥けきれていない世代の一人だった。この優勝は他の同世代選手たちに新たな刺激になるのかもしれない。


磨けば必ず輝く原石としては早くから認められていた。その才能を伸ばそうと先輩役を買って出たのがアーニー・エルスだった。エルスが設立したジュニア育成機関に所属した時期もあった。CA選手権の前週のホンダクラシック、シュワーツェルは予選突破できず、翌週の大会までの期間、エルスは彼を自宅に招き入れた。


「あいつにはたくさん貸しがあるよ。飯も食わせたし、うまいワインも飲ませたさ」


とエルス。かわいい後輩の快挙を最も喜んでいる側近の一人であることは間違いないだろう。


父ジョージは70年代にサンシャインツアーで数年ツアープロとしてプレーした。チャールがまだ幼い頃、ベストボール形式の大会で偶然エルスとチームメイトになり優勝した経験もあるそうだ。


ジョージのプロ生活が終わった後、母リゼットの故郷デニーズビルに移った。広大な土地で農業を営んだ。広大な土地の一角にチャールと弟アティー(現産サインツアーメンバー)のためのゴルフプレーグラウンドがあった。ひたすらボールを打てるだだっ広い土地。父ジョージはそこで息子たちに基本に忠実で、極めてシンプルなスイングを教え込んだ。チャールが師事したコーチは父のみで、それは今でも変わっていない。ただ、ジョージは息子の遠征には付き合わない。今となっては実家に戻ってきた時だけアドバイスをもらっているそうだ。


「余計な情報を頭に入れて複雑にしたくない。ただでさえ難しいんだから」


とチャール。


マスターズのサンデーバックナイン、どこか乗り切れていないようにも見えた。1番ではグリーン脇からチップインバーディ、そして4番ホールの2打目、残り114ヤードを直接カップインしたショットは圧巻だった。ただ、マッキロイに並んだもののそこから10連続パー。首位は目まぐるしく変わる。決めきれないパットが続いた。タッチが合っていないようにも見えた。それとも出方を伺っていただけなのか・・・。


「当たり前だけど、あんなシチュエーションでプレーしたことはなかった。でも驚くほど落ち着いていた」


そしてラストスパートをかけた最後のパー5、15番からことごとくチャンスをものにしていった。上がり4ホールを5パット。「練習の積み重ねがあったからできたこと。それは誇りに思う」とシュワーツェル。


2歳年上で「ベストフレンド」と呼ぶ同郷のルイス・ウーストハウゼンと合わせると直近の3メジャーのうち2つを南アフリカ出身選手が制したことになる。共に低評価を覆しての優勝。彼らを間近で見ている選手たちはその実力を認めていた。


「彼は勝ち方を知っている。派手ではないからあまりみんなの記憶には残っていないかもしれないけど、欧州ツアーの選手たちは彼のショットの精度の高さを知っている。スイングも美しい。去年、何度か一緒にラウンドしたけど、彼のボールストライキングは一流だった」


アダム・スコットは言う。3日目の後の会見でジェイソン・デイは最近の若手選手の台頭に触れ、


「世界中のツアーのレベルの高さを証明していると思う。ツアーに入ってプレーすることがどれだけ大変なことかも証明している」


と言っていた。トップアマの大会の歴代優勝者だけに注目していてはこれからのゴルフ界は語れないし、従来とは違うルートでもメジャーチャンピオンが次から次へと出てくることも証明してくれた。


「歓声がすごかった。言葉にならない雰囲気だった。今日は素晴らしい一日だった」


また来年も戻ってこれる ― オーガスタでチャンスをものにした勝者にのみ与えられる特権なのだ。

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