全米オープン回顧:ロコ・メディエイト、甦った「紳士」

全米オープン期間中、ずっと気になっていた。ロコ・メディエイトの帽子に無造作に散りばめられていたピンバッジ。そして、何かのシンボルにも見えるベルトのデザイン。それはメディエイトのプロゴルファーとしての生き様そのものを象徴しているものだった。

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photo: latimes.com

メディエイトのベルトのロゴは「ピース(平和)」のシンボルだった。それは彼のラウンド中の表情や仕草を見ていれば納得できた。


最終日は一昨年の覇者ジェフ・オギルビーとのラウンドだった。7番ホールでオギルビーのバーディパットがカップの淵で止まり、観客がため息をついた時、メディエイトはボールに息を吹きかける仕草を見せ、手で「入れ!」と促した。そして、暫くしてボールが落ちると、ギャラリーに向かってニヤリと笑って見せた。


人生最大のラウンド中に自分よりも14歳も年下で、しかもメジャータイトルを既に取っている若者を心底から応援できるのはなぜなのだろう...。とても不思議な感覚に陥ったのは、きっと僕だけではないはず。メジャー最終日という大舞台でも、気負わずに素の自分を貫いている姿は、見ていて清々しかった。


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photo: GDO


そして、キャップについているバッジの数々。これは大会の会場に設置されている売店で買いあさった全米オープンのオリジナルバッジだそうだ。それをあたかも野球の試合に連れて行ってもらった小学生のように、誇らしげにつけている。きっと今週会場に集まった数万人の誰より、この大会への思い入れが強く、ゴルフというスポーツを愛しているのだと思った。


「今日、僕がここに来ると思った人はいなかっただろう?」最終日を終えた記者会見の開口一番でメディエイトは笑顔を浮かべて言った。


確かに、2年前のマスターズの残像が脳裏にあるだけに、メディエイトが再びメジャーの最終日に首位に立っていることは想像もできなかった。2006年のマスターズ、彼は最終日を迎え首位に立っていた。そして物の見事に撃沈した。背中に走る激痛と戦いながらのラウンドで、終わってみれば「80」の大叩き。その後、PGAツアーのテレビ中継の解説を始めたこともあり、周囲は彼のキャリアは終わったと決め付けていた。


メディエイトを救ったのはシンディ・ヒルフマンという整体医師だった。大学の同級生でもあり1993年、98年に全米オープンを制したリー・ジャンセンの存在も大きかった。10年前の全米で予選落ちしたメディエイトは、週末もコースに残りジャンセンの後押しをして優勝を見届けた。ジャンセンのトロフィーには触らず、「全米オープンのトロフィーを触るのは、自分が勝った時まで取っておく」と心に決めた。


10年後巡ってきた最大のチャンス。最終日の朝、ジャンセンから携帯メールが入った。「完璧を求めるな。素のお前でいればいい」と。そんな素のメディエイトに、トーリーパインズの観衆は魅了された。フェアウェイを歩いていても、なるべくギャラリーとアイコンタクトを取り、手を振った。真のゴルフファンであるからこそ、そこに心の余裕が生まれたのだろう。


プレーオフを前に、タイガー・ウッズはメディエイトについてこう言った。


「彼のようなナイスガイはいない」と。


ゴルフ界にいない、のではなく、どこを見渡してもいない、というニュアンス。このタイガーの言葉に納得した人は多いのではないだろうか。


ゴルフは「勝ち負けだけではない」という言葉が奇麗事でないことを、メディエイトというプロゴルファーが改めて教えてくれた。


ありがとう、ロコ!

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