ゴルフの神は絶対に「紳士」を見捨てない件

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photo: flickr@simplistic.designs


「ゴルフは紳士のスポーツ」とはよく言ったもので、実際はそんな綺麗さっぱりな世界ではない。メディアを利用して敵を罵るモノもいれば、アドバンテージを得るためには手段を選ばない選手もいる。


でも、ゴルフの神は紳士を見捨てない。先週、そう確信させてくれる出来事があった。


BMW選手権3日目。雨によるサスペンデッドでこの日は各選手2ラウンド回る長丁場となった。来季のツアー出場権をかけて戦っていたスコットランドの若手マーティン・レアードは、アメリカの大ベテラン、バート・ブライアントと回っていた。この日の1ラウンド目が終盤に差し掛かった16番ホール、パー3で事件が起きた。


レアードのティショットはカラーに当たりピンそば1メートルに寄った。一方、ブライアントはグリーンをショートしてピンまで15メートルのラフに入れてしまった。グリーンに歩み寄ったレアードは何気なく自分のディボットをパターのソールで叩いて平らにした。


「ラインに乗ってますか?と聞いたんだ」とレアード。


ブライアントは「乗っている」と答えた。だが、ブライアントはそのディボットを越えてアプローチショットを狙うつもりだったので関係ないと思っていた。


USGAの「規則1-2」によると、レアードが同伴プレーヤーのラインが改善される、良くなるような行為は禁じられている。この規則を破った場合は2打罰となるのだが、この事態に気付いた時にはレアードは既にスコアカードをサインしていたため失格処分になるはずだった。しかし、両者の話を聞いた結果、レアードはブライアントを助ける意志は全くなかったため、USGAはレアードに対して一打も罰を与えずにプレー続行を許した。


ところがどっこい、ブライアントが罰を受けるハメになったのです。


「規則13-2」によると、選手は自らのラインを(有利になるように)良くしてもいけないし、「良くさせても」ならない、と明記されている。要は、相手のディボットがライン上にあると認識して、それが自分の意志とは関係なく同伴者が直してしまったらそれはペナルティーになってしまうのだ。逆に、同伴者の行為一つで、自分が罰を受けてしまうということなのだ。


この日、ルールオフィシャルを勤めていたPGAのホワイト氏がブライアントに「あなたのショットのライン上にディボットがあったか?」と問いかけた時に彼は何の迷いもなく正直に「はい」と答えたそうだ。また「レアードがパターでディボットを直しているのを止めることはできなかったのか?」とブライアントに問いかけた。その回答でブライアントに「あなたの目を真っ直ぐ見て、良心に省みても『止めることはできた』とは言えない」と答え、己の非を認めたそうだ。


その回答で、ブライアントはこの規則を破ったことになった。相手の行動を止めるのも自分の責任ということだ。ゴルフとはなんて深い、いやいや、なんて複雑なスポーツなんだろう...。


「彼が2打罰をもらったなんて信じられない」とレアード。


「彼の誠実さは素晴らしい。かっこよすぎる」とホワイト氏は振り返った。


何度聞いても理不尽なルーリングのように見えるが、それがゴルフというスポーツ。ブライアントは言い訳はせず、罰せられるべきだったかと聞かれると、「はい。ルールを破ったから」と淡々と答えた。


「ルールを知ってて破ったわけではない。そんなルールがあることすら知らなかった」とブライアント。


同伴のレアードはこの大会を無事にホールアウトさえすれば来季のツアーカードが取得できることも知っていた。この日の後の記者会見では、「彼が失格にならないことが最も心配だった。もし、予選カットもない大会で失格になんかなっていたら、それほど悲劇的なことはなかっただろう...」と最後までプレーイングパートナーをかばった。


そして、この一件の数時間後、ゴルフの神が救いの手を差し伸べたのです。


奇跡が起きたのです。


迎えた午後の第3ラウンド。インスタートからの13番パー3。



この日の終了後、レアードはブライアントにこう言ったそうだ。


「さっきの2打、取り戻せましたね」と。


こういうさりげない一言は、ゴルフが美しいと思える瞬間。


ゴルフの神と言われる者が、ブライアントのボールに吐息をかけていたに違いない。


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photo: nbcsports

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