「Race to Dubai」、世界恐慌・・・日本ツアーよ、大丈夫か?

長年、世界のゴルフ界を牽引してきた米国PGAツアー。世界的金融不安で経済界、政界が揺れ、アメリカ本土で大会を展開するPGAツアーにも少なからずその影響を及している。


PGAツアーの試合をスポンサードしている企業を見てみるとゾッとする。FBRマスターカード(A.パーマー・インビテーショナル)、モルガンスタンレー(ザ・メモリアル)、UBS(ザ・プレーヤーズ)などの今にも倒れそうな(倒れた)金融系に始まり、車業界からは業績不振のGM(ビュイック)、独BMW...。ソニーの株価は昨年末から40%も下落している。PGAツアーをバックアップしている企業の中でまともに黒字経営をしているスポンサーは果たして何社あるのだろうか。


そんな流れの中、先日、欧州ツアーが2009年よりツアー資格を取得するための最低出場試合数を11試合から12に増やすと発表した。また、それと同時に、昨年末に発表された来年から開始される「Road to Dubai(ロード・トゥー・ドバイ)」が注目を浴び始めている。なにせ1,000万ドル(約10億円)のボーナスがかかっている。


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photo: flickr@s_zeimke


Road to Dubaiを簡単に説明しておくと、これまで欧州ツアーの賞金ランキング制度となっていた「Order of Merit」が来年からはこの「Road to Dubai」に生まれ変わる。今年の11月から1年間をかけて戦い、賞金ランキングトップ60名が最終戦の「ドバイ・ワールド・チャンピオンシップ」に集結、上位15名が10億円のボーナスをかけて争う。最終的に賞金ラング1位になった選手には、約2億円のボーナスが支給される。選手にとっては、欧州ツアーでプレーする魅力が倍増する。


そこでなぜこのタイミングで11試合から12試合に最低出場回数を増やしたのか?


正直、これまでの観点から言うと、欧州ツアーはあまり見向きもされていなかったツアーだった。それでも、アメリカ経済が大打撃を喰らっているこのタイミングで、そのツアー資格の条件を上げてきたのは「アメリカ本土のトッププレーヤーたちはこっちの甘い蜜に眉を上げるだろう」といった目論見もあるのだろう。ましてや、FedEx Cupプレーオフの導入で、PGAツアーのトッププレーヤーは実際は9月末でシーズンが終わり、3ヶ月ほどの休みに入ることになる。休暇は取るものの、暇をもてあましている世界ランキングトップの選手が参加してくるとなれば自ずとツアーの注目度も高まる。視聴率もテレビ放映権も上がる。気付いたら欧州ツアーが世界の中心になっている...なんてことも考えられなくもない。


経済状況と並行するかのように、アメリカのゴルフ界もある意味大きな分岐点に立たされるのだろうか。オイルマネーを武器にドバイは欧州ツアーを利用して人も金も引き寄せようとしている。


実は、過去に「競馬」でも同じような時代の流れがあった。灼熱の地で競走馬を育成するような地でもないドバイが、主にオーストラリア、イギリスから名調教師と言われる人を誘致し、世界で最も高額な競馬開催「ドバイ・ワールドカップ」を開催。かつて賞金額だけで見れば圧倒的に世界をリードしていた日本の競馬はそっぽ向かれ、今では世界中の競馬関係者はドバイに照準を合わせて年間のスケジュールを組んでいる。そしてドバイはアメリカに対して異常なほどのライバル心がある。「PGAツアーと組もう」なんて毛頭考えもしなかっただろう。


このドバイのボーナスシリーズには、現に多くのPGAツアー選手の興味を燻っている。ロバート・アレンビーは既に欧州ツアー資格を保有し、全米オープンを制したジェフ・オギルビーも参加表明をしている。更にはフィル・ミケルソンビジェイ・シンらも興味を示しており、優秀なプレーヤーの大量流出は現実的な問題として挙がってきているのだ。タイガー・ウッズは参加しない意思表示はしているものの、スポンサーなどの話が絡んむとどう転ぶか誰も分かるまい。


多くのPGAツアー選手がここにきて欧州ツアーに興味を示し始めているのには、ツアー資格を取るハードルがそれほど高くないところに大きな理由がある。最低出場回数の12試合にはメジャー4試合、WGC3試合が含まれていて、実際彼らが欧州やアメリカ以外でプレーしなければいけないのは最低で年間5試合しかないのだ。ミケルソンの例を取ると、既に11月のHSBCチャンピオンズに出場を表明していて、ここ数年は全英オープンのウォームアップとしてスコティッシュ・オープンにも出ている。なので、ミケルソンが同じスケジュールで来年戦うとなれば、あと3試合プレーすれば欧州ツアー選手になれる、故にドバイでの大金を手にするチャンスが生まれるのだ。


こう書いていて、益々思うことがある。


日本のツアーと選手の存在意義だ。


この大きな転換期を迎えようとしている中、欧州ツアーと手を組む必然性はなかったのか?日本のツアーが世界のゴルファーにどういった貢献ができているのか?


日本のツアーはこのままでは確実に世界のゴルフ界の流れに置いていかれる。欧米と比べると賞金額の少ない日本の大会にわざわざ海外のスター選手が来日するのは、正直アピアランスフィー(出場料)が目当てであり、日本の地で良績を残すことは二の次。本気で日本のツアーの選手を倒そうと思って来ている選手なんていないだろう。先週のカーティス・ストレインジとフレッド・カプルスを見れば一目瞭然。完全にナメられている。


そして、選手も、こんな時代だからこそ、思い切って海を渡ればいい。国内で選手を育成することは大事だが、この混沌としたゴルフ界だからこそ、日本のツアーには素晴らしい選手がいることを世界に証明できるビッグチャンスなのだ。今年、今田竜二がPGAツアーで優勝した事は、少なからず世界という舞台で日本人が互角で戦えることを証明してくれた。谷原も、矢野も、片山も、甲斐も、石川も、彼の足跡を追いかければよいのだ。


今季、日本の男子ツアーは3試合増えた。果たして来年はどうだろうか?恐らくこの不景気の中で白旗を振る企業も出てくるだろう。数年前、女子人気の影でただただ寂しく大会をこなしていたあのJGTOの姿が脳裏を過ぎる。


石川遼が予選落ちする、しないで騒いでいる場合ではない。世界恐慌のこの時にこそ、日本ツアーの存在感を示さなければいけないのだ。

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