豪出場ギャラ2.7億円!タイガー@JBWereマスターズが成功した(するであろう)からくり

先日お伝えしたオーストラリアでのタイガーフィーバー。なぜにここまで盛り上がっているのかを色々と調べていたら、やっと点が結びついてカラクリが見えてきました。


tigerwoods1111.jpg
photo: zimbio.com


まず、先日の記事で「オーストラリアン・マスターズ」と書きましたが、正確な大会名は「JBWereマスターズ」。長年、豪メジャー大会の一つとして開催されていて、かつてはグレッグ・ノーマンセベ・バレステロスなど世界中のトッププロが集い一目置かれる大会でした。しかし、近年では地元選手たちが海外ツアーから「一時帰国」したついでにプレーをする大会になってしまい、メディアの注目も年々低下。


そこにタイガー・ウッズというカンフル剤を注入し、今年の騒ぎになっているようです。プロアマでタイガーとラウンドする権利を一口3,000万円以上出すと申し出た大富豪もいたそうです・・・。タイガー出場の機会を見逃すまいと、JBWereが冠スポンサーを買って出て、プロアマや夕食会などを通じてJBWereは優良顧客を招待・接待するとのことです。今大会のスポンサー契約料は200万ドル(約1.8億円)とも言われています。


なぜここまでの騒ぎになっているのか。そこには2つのポイントがあるようです。


1.タイガーを呼ぶことになった大会運営者(所有者)がIMGであるということ
2.大会は州政府が「後援」しているということ


少し見にくいかもしれませんが、まずはこちらのグラフをご覧ください。今大会の大まかなお金の流れです。これから記載する内容は恐らく80~90%くらい正しいと思います。(これ意外にもマージン手数料や細かい契約条件などが絡んでいると思われます。)


jbweremasters1111.JPG


今大会、タイガーを呼べることになったのはIMGがこの大会自体を運営し、「主催」しているからでしょう。まず、タイガーのギャラですが、ダンロップ・フェニックス出場の時も話題になりましたが、彼のアピアランス・フィー(ギャラ)は桁違い。今回のギャラは、なんと、3,000,000ドル(約2.7億円)。最後にタイガーがダンロップ・フェニックスに来日した2006年のギャラも同じく3ミリオンでした。その時の賞金総額が2億円、優勝賞金が40,000,000円でした。今回のJBWereマスターズの優勝賞金は270,000ドル(約2,430万円)、賞金総額が1,500,000ドル(1.35億円)。賞金総額がちょうどタイガーのギャラの半分なのです。


まず、このギャラの出所ですが、調べたところ、今年の3月にタイガー招聘のためにヴィクトリア政府が150万ドル(約1.35億円)の予算を使うことを明らかにしていました。ということは、当然ながら、ヴィクトリア州住民の税金の一部がタイガー招聘に使われているわけです。州政府が大会の主催者であれば何の問題もないのですが、ややこしいのは「後援者」であるということ。恐らく、州の方針として「ゴルフを通してスポーツ文化の発展」などといった大義名分がたてられているのでしょう。よって、大会を通じての直接的な売上が目的なのではなく、タイガーを招致して派生する州全体の経済効果があると判断したのでしょう。


ジョン・ブランビー州首相は、


「タイガーの名声で州経済に1,900万ドルの利益が生まれるはず」と言っていたそうです。


一方、野党のテッド・ベイリュー党首は、


「大会は政府後援のトーナメント。世界的なテレビ中継の契約やスポンサー契約もありません。たとえタイガー・ウッズといえど、1,900万ドルの経済効果を生むとは信じられない」


と反論していました。しかし、チケットは販売開始間もなく完売!


タイガーのギャラの半分が州政府、残りをJBWereが負担する形になったのでしょう。このようにしてグラフにしてみるとよく分かるのが、IMGは「タイガー・ウッズ」というブランドで一つの商品を作ってしまっているということ。IMG側からすれば自分たちは云億という費用を負担せず(リスクを背負わず)、タイガーの出場料&獲得賞金のキックバックが入ってくるわけですからこんなにおいしい話はないでしょう。しかも、「主催者」であるため、一般ファンのチケット収入、テレビ放映権料、オフィシャルグッズの版権使用料などの副収入も見込めます。当然、オフィシャル、ゴールドと区別された「スポンサー」からの収入が大きな収入源になっています。


日本であれば、主催者(JGTO、LPGA)がいて、運営者がいて、そしてスポンサー、メディアパートナーがいます。スポンサーが財布を握っていることに変わりはありませんが、今回のJBWereの例は日本で言うならJGTOとダンロップスポーツエンターテイメントの役割をIMGが1社で担っていることになるのかな・・・。


州政府にとってのうまみは何か?先にも書きましたが、「ゴルフ文化の発展」などといったオブラートな目的を達成するだけではなく、住民の税金を使っている以上それなりの経済効果を求めているはず。今大会の1週間を通して観客動員数は恐らく15~20万人の間になるでしょう(月曜日の練習ラウンドで10,000人越え)。ゴルフ場以外(ホテル、食事など)の効果として、仮に一人一日200ドルを使ったとすれば地元には300~400万ドルの経済効果があり、それだけでタイガーのギャラに支払った額が街に還元されることになります。


では日本でも同じことができないか?


まず、住民の税金を使ってまでタイガーを招致しようとする県知事はいないでしょう。いたとすれば、ものすごい勢いで叩かれるでしょう(逆にそれが話題になるかも・・・)。根本的なことですが、今回の大会で皆がWIN-WIN-WINの経済効果を見込めるのはオーストラリア人にトーナメントゴルフ(PGAツアー)が浸透していて、それも世界的に活躍している選手が多く、それら選手のファンベースが確立されているということが挙げられます。石川遼がいくら世界的に認められ始めたとはいえ、タイガーに匹敵するライバルもしくは人気選手が複数いなければここまでメディアは騒がなかったでしょう。アメリカに次いでスーパースターが多いオーストラリアだったからこそ成し得た企画だったのかもしれません。


「オーストラリアのゴルフ界にとって、これ以上素晴らしいことはない。これくらいのインパクトがこの国のゴルフ界には必要だったんだ。チケットが完売するなんて、ノーマンが活躍していた時以来のこと。この成功をきっかけに他の大会主催者にも経済的な見返りを求めるならまずは自腹を切らなければいけない、ということを認識してもらいたい」と昨年度覇者のロッド・パンプリングは言っています。


「確かに巨額な投資だったけど、非常に賢明な選択だったと思う。80年代、90年代にはノーマンが名実ともに観客を引き寄せていて、世界中のトッププロが彼とプレーするためにオーストラリアの大会に出場しにきていた」スチュワート・アップルビー


オーストラリア選手からしてみればタイガーは大歓迎。地元のどの選手よりも注目されることに関しては全く僻みはないようです。


「年初にタイガーと冗談を言っていたんだ。『自分の国で勝つのに10年かかった。やっと勝てたと思ったら、お前が来るから全くメディアに取り上げてもらえなくなるじゃないか』ってね。でもオーストラリアのゴルフ界にはこれが必要だったんだ」とパンプリング。


日本のゴルフ界にとっても、この成功例の中に何かのヒントがあるような気がします。

PR

Access Ranking

Golf-aholic.com