カミロ・ビジェガスが失格になった経緯 [TwitterのTL& 動画有り ]

今日からPGAツアー第2戦「ソニー・オープンinハワイ」が始まりますが、その前に先週の「ヒュンダイトーナメント・オブ・チャンピオンズ」の出来事で一つ触れておきたいことが。


昨年から続いている「ルール違反による失格」がシーズン初戦からいきなり出てしまいました。


しかも、これが史上初となる「Twitter上での告発」がきっかけだったのです。タイムラインを遡りながら、ことの経緯を振り返っておきたいと思います。

まずはビジェガスが失格処分となったシーンのおさらい。こちらもYouTubeに動画がアップされています。


問題となったのはヒュンダイトーナメント・オブ・チャンピオンズ初日、15番ホール。


camilovillegas20110113a.JPG


グリーン手前からの登りのアプローチ。ロブショットではなく、転がしてグリーンオンを狙ったビジェガスでしたが、


camilovillegas20110113b.JPG


グリーン手前で失速。不運にもボールは打った地点の近くまで戻ってきます。


そして、ここからが問題となっているシーン。


camilovillegas20110113c.JPG


ボールが動いているにも関わらず、飛び散ったターフをクラブ(ウエッジ)で動かしてしまったのです。


こちらが動画。0:20あたりでターフを動かしています。



これはUSGA規則23-1「ボールが動いている最中に、(そのボールの)動きに影響を与える可能性のあるルースインペディメントは動かしてはならない」というルールに違反していることが発覚。2打罰を加えずにスコアカードをサインして初日を終えて帰ってしまったビジェガス。コースを去った後にPGAツアーのオフィシャルがこのプレーのビデオを見直し、ルール違反と判定。翌日、ビジェガスとともに改めてリプレーを確認し、本人もルール違反、失格を素直に認めたそうなのです。


なぜこの失格処分が話題になっているかというと、ビジェガスの違反に気付いたのがPGAのオフィシャルでもゴルフチャンネルのコメンテーターでもなく、一般視聴者だったから。しかも、この人はTwitterを使って違反を呼びかけたのです。


Twitterを使って通報したのは米ニューハンプシャー州在住のデーブ・アンドリュースさん。テレビレポーターを30年以上勤め、現在はフリーのジャーナリストとして執筆、サイトを運営しているとのこと。


アンドリュースさんのサイト


この日、友人数名と試合をテレビ観戦していて、ビジェガスのショットを見た後にゴルフルールに詳しい友人の一人が「今のおかしくないか?」と気づいたとのこと。ルールブックが手元になかったため、USGAのサイトにアクセスし調べてみたところ、規則23-1がピッタリはまったのだとか。


おかしいと思ったところで誰に連絡をしたらいいかわからなかったアンドリュースさんは、とりあえずTwitterで呼びかけたのです。PGAツアーのアカウント、中継をしていたゴルフチャンネル、そしておそらく会場にいるであろう主要媒体のジャーナリストたち宛にメッセージを送ったのです。


アンドリュースさんのアカウントを遡ると、その証拠が残っています。以下がその一部。


=====================================
ルール違反???カミロ・ビジェガス、15番ホールでボールが自分に向かって転がっている時にターフの破片(ディボット跡)を動かした。ペナルティ??1月7日10:22


@GolfChannel ルール違反???カミロ・ビジェガス、15番ホールでボールが自分に向かって転がっている時にターフの破片(ディボット跡)を動かした。1月7日10:24


@nothreeputt @PGA_com ゴルフのルールに詳しい友人たちもあれは明らかなルール違反と言っていた。調べたところ、規則23-1に該当する。1月7日 12:00


@PGATOUR_EP 15番ホールのビジェガスのプレーがルールに反していないかチェックすべきだ。USGA規則23-1 "ボールが動いている際、ルースインペディメントを..." 1月7日 13:14


@ronsirak @GeoffShac 今日、対処すべき人間が気付いていない明らかなルール違反があった。ビジェガス、15番、2打目アプローチ。規則23-1。1月7日 13:58


@PGATOUR 15番の2打目アプローチでビジェガスが犯した明らかなルール違反をPGAツアー内の誰かはチェックしているのか?"動いているボール/ルースインペディメント"1月7日 14:43
=====================================


これらの呟きが徐々にアンドリュースさんのフォロワーにRTされ、最終的にはPGAツアーオフィシャルが再確認をすることになったのです。


「書き込みは善意でやっていた。ルールの隅をついて密告しようという意図はなかった。あれを見て、誰も呟いていなかったのが驚きだった。ゴルフチャンネルはリプレーも流していたので、彼らは気付いていると思った。でも気付かれずにスルーされてしまうのも分かる気がする」

とアンドリュースさん。


今回の失格騒ぎで改めて議論のポイントになっているのは2点。


1.同伴選手やオフィシャルではなく、「一視聴者」の声で試合が左右されるべきなのか?


2.「プレーヤー自身がジャッジ」のゴルフ競技。果たして選手たち自身はこれをどこまで深く自覚しているのか?この定義自体に限界があるのか?


といったところ。ちなみに、ビジェガスが失格処分になった後、アンドリュースさんを「密告者」扱いするメッセージをいくつか受信しています。それに対するアンドリュースさんの受け答えをいくつか紹介。


=====================================
(@jaybusbeeのツイート)
ビジェガスの件で重要なポイントとなるのは、ルール違反を訴える視聴者からの声を「密告」と捉えるべきか、はたまたゴルフルールの伝統に準じているものか、だ。意見求む。1月8日 12:44


(@DaveAndrews723のツイート)
@jaybusbee 数百万人の視聴者の前で起きたことは「密告」とは言わない。オフィシャル、コメンテーター(解説者)は何を見ているんだ。1月8日 1:10


(@DaveAndrews723のツイート)
念のため言っておくが、ツアーには一度も電話はしていない。PGAツアーとゴルフチャンネルに確認を求めるツイートを2回送っただけだ。1月9日 12:45


(@mikelandgrebe のツイート)
どのスポーツもルールブックがあり、すべての試合で審判とオフィシャルがいる。良くも悪くも彼らが判決を下す。家でテレビを見ているどこの骨かわからない奴がその役割を果たすべきではない。1月9日 1:05


(@DaveAndrews723の返信)
@mikelandgrebe マイクさん、オフィシャルが良し悪しを決めた。私は意見を言っただけだ。野球の試合で審判に向かって吠えているファンと一緒(なんとなく)。1月9日 1:08
=====================================


上の「1.」に関しては様々な見方があるようです。たとえば、イアン・ポールターは次のように呟いています。


「肘掛椅子に座っているオフィシャルがTwitterをしたがためにカミロが失格になった。何を考えてるんだ。もっとましな時間の使い方はないのかよ」


「ルールはルール。カミロがミスを犯しのたのは事実。ただ、彼はミスをしたことに気付いていなかった。でも他人が通報するなんてね...密告者を好きな奴なんていないよ」


とかなり否定的な見方をしています。ルール、そしてペナルティーに関してはポールターも共感できるはず...。昨年11月のドバイワールド選手権プレーオフで、誤ってボールをマーカーの上に落としてしまい、マーカーが動いて2打罰を食らっています。


個人的にはアンドリュースさんの最後のツイートは非常に的を得ていると思います。視聴者の意見が審判の決断を左右するなんて野球、バスケ、サッカーなど他の競技では考えられません。ただ、ファン(もしくはメディア)は審判に意見することはできます。そこから白黒を決めるのは審判の仕事。これは同伴選手がオフィシャルに訴えても一緒です。


実際、PGAツアーにどれくらいのルール違反を訴える連絡があるのかは不明ですが、ルールオフィシャルのジョン・ブレンドル氏によると「数えきれない抗議電話」の80%以上は何の問題にも繋がらないとのこと。それでも、オフィシャルの仕事は試合の公正確保であり、連絡をもらった案件は全てチェックしているそうです。


「電話をもらったらすぐに確認しています。確認するのが我々の任務。ルールを破れば、ペナルティーが科される-それだけです。残念ながら、事実が確定(スコアカードにサイン)してから電話をくれる人がいます。もう少し早く電話をくれていれば、せめてその選手が失格にならなくても済んだのに...というケースもあります」


とブレンドル氏。NFLが真っ先に取り入れ、今では多くの競技(サッカー以外...注:イングランドVSドイツ)で定着している「インスタント・リプレー」の制度を導入するのはどうか...?という意見もあるようですが、個人的にはこれは論点がずれていると思います。なぜなら、大前提としてゴルフは「己が審判」であり、この点はバスケ、野球、アメフトなどと比較すべきではないからです。そしてゴルフは広大な敷地で140名近くの選手がプレーをしています。フェアな制度を導入しようとするのであれば膨大な費用がかかります。


では「己が審判」であるという暗黙の了解がどれだけ浸透していて、選手自身がどこまでルールを分かっているのか...。イアン・ポールターババ・ワトソンらはルール違反を目撃した場合、誰に連絡をすれば良いか分からないと言っています。さらに、一般的に、選手のルール理解度はどれくらいなのか、という問いに、


「10点満点で5点くらいじゃないか。それも、かなり甘い点数だけどね」


ロコ・メディエイトは言っています。個人差はあるのでしょう。でも、これも現実なのかもしれません。


簡単な解決案はありませんが、一つの案としては、「(ラウンド毎の)スコアカード」を中心に考えるルールを撤廃し、大会終了時までにペナルティーを科すことができる規定にすれば、今回のようなケース(スコアカードサイン後の違反発覚)でも選手は救済されます。こればっかしは正解はないのではないでしょうか...。トライアル&エラーで新たな試みも取り入れていくのも良いのかもしれません。


今回の件で分かったことは、一視聴者のつぶやきが試合の行方を左右するということ。それだけでも大きな一歩、いや、ヒントなのかもしれませんね。


カミロ・ビジェガスが失格処分となった決定的シーンの動画はこちら

PR

Access Ranking

Golf-aholic.com